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生痕

trace fossil
人間の脳には記憶を保存する際、学習時に活動したニューロンの集団が記憶痕跡(memory trace ; engram)として物理的に脳内で残り続ける。
同じように、デバイスは入力された画像の媒体としてそのデータを保存し、たとえ忘れ去られたとしてもその痕跡を残し続ける。

記憶は、その記憶に関連付けられた物・情報を見つけるなどの手がかりの中から、その時に体験した経験を思い出す(想起させる)ことで、それが「思い出」として構成される。
しかし、その「思い出」を思い出す(想起させる)とき、あたかも経験したかのような誤った記憶が紛れ込んだり、別の記憶と関連付けられてしまい、経験した過去とは違う想像された「思い出」が構成されてしまう。

フォトグラメトリは、入力された画像データから、そこに写されたもののの角度や形を推定し3Dモデルを生成している。
そのため、入力された画像の枚数が極端に少なかったり、解像度が低かったりすると、そこから写されているものとはかけ離れた3Dモデルを推定し生成してしまう。

記憶と記録を繋ぐ物質として痕跡はある。

この作品は、私が幼少期にDSiLLで撮影した写真をフォトグラメトリに入れそのものの3Dモデルを生成し、私自身がその写真から思い出した「思い出」を書き出すことにより、
物質に保存された記憶と記録を、痕跡を持つ生痕化石として形づくる試みである。

 
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​実は作品で使ったDSiLLの前に発売されたDSiも持っていたが、DS内にあるSDカードがデータを保存していることをまだ知らなかった。
そのためDSiLLに機種変更をする際、DSiで撮影していた写真が写っている画面をDSiLLで再撮影してデータを移そうとしていた。
​肝心の写真は写真をスライド移動させながら撮影していたためぶれてしまっているが、そのころ遊んでいた人形の子を撮影し、
後からフキダシとその中にセリフを入れることで、人形の子をしゃべらせている写真があったのを覚えている。

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コロコロコミックが好きで毎日次のページに何が描かれているか覚えているほど何度も読み返していたが、その中でもでんじゃらすじーさんが好きだった。
そのころは登場人物であるじーさんの顔を描きはがきで送るコンテストのような企画があり、そのページを撮影したものだと覚えている。
確か自分はそのコンテストに応募していないはずだが、なぜこのページを何度も撮影したかはよく覚えていない。

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DSにはデコレーションや歪みをリアルタイムでも加えられる画像加工機能が多くあり、
この写真はその中の顔を認識してマリオの帽子と鼻を付けられるフィルターで撮影している。
ただそのフィルターは人間の顔を認識しないと撮影することができない仕組みになっていたので、一度顔を認識させたあと高速でDS本体を動かすなどの方法を試し、人間の顔でないものにどうすれば顔を認識させた状態で撮影できるかを実験するようにして遊んでいた。
最後の写真はそれの一環で撮影したものだと覚えている。

When memories are stored in the human brain, clusters of neurons that were active during learning remain physically present as "memory traces" (engrams).

Fixed memories are recalled by cues such as finding an object associated with the memory, but are then forgotten or combined with unrelated memories.
The device is not a picture, but an image.

In addition to the images stored on the device, the device retains a record of traces, such as fingerprints or scratches, that indicate that the device was used in the past and that the images were touched there.

If a large number of images are entered into photogrammetry, it automatically selects 3 to 10 similar images, but if the images were not taken with the intention of being included in the software, they will be generated as a 3D model that is misshapen and indistinct.

Traces exist as a material that connects memory and record.

This work is a fossil of dim memories and records, created by excavating a childhood DSi LL from a pile of devices that had accumulated like a sediment, and continuing to generate 318 images stored on the device as a body of images with traces left behind through photogrammetry.

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